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破産管財人の役割・権限・支払う報酬について

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2024年8月5日

1 自己破産手続きと破産管財人

自己破産の手続には、破産開始と同時に破産管財人が選任される管財事件と、破産開始と同時に手続が廃止される同時廃止事件があります。

同時廃止事件についてはこちらをご覧ください。

一般消費者の方が破産される場合、破産管財人の費用を捻出することが困難なケースも多く、同時廃止となる案件が多いですが、法人破産の場合は同時廃止となることはほとんどありません。

そして、自然人(個人)の方でも、一定程度の財産がある場合や、免責不許可事由の調査が必要な場合などには破産管財人が選任されることとなります。

なお、どの程度の財産があれば管財事件になるかという点は、各裁判所の運用によって決められています。

ここでは、破産管財人の役割、権限と、破産管財人に支払われる報酬についてご説明します。

2 破産管財人の役割

破産管財人の役割は、破産財団(破産手続の費用や債権者への配当に充てられる破産者の財産)に関わるものと、破産者(自然人のみ)の免責に関わるものがあります。

⑴ 破産財団に関する破産管財人の役割

破産財団に関する破産管財人の主な役割には、以下の3つがあります。

①破産財団に帰属する不動産や動産を換価すること

②破産者が提出した財産目録に記載されていない財産が存在しないか調査すること

③破産債権者に配当を行うこと

①は、土地建物や車を売却して金銭に換えるということですが、中には、住宅地の需要がほとんどない地域の荒れ果てた土地など、売却が困難なものもあります。

このように金銭に換えることが困難な財産については、破産管財人は裁判所の許可を得て放棄することとなります。

破産管財人が財産を放棄した場合、その財産は破産財団の帰属から離れるため、破産者が自由に処分してよいこととなります。

②について、破産手続開始後、破産者宛の郵便は破産管財人に転送されますので、破産管財人は、まず破産者宛の郵便物をチェックして財産目録に記載されていない財産がないかどうかを調査することとなります。

例えば、財産目録には保険が一切記載されていないのに生命保険会社から破産者宛ての郵便があった場合には、破産管財人は、その生命保険会社に問い合わせて保険および解約返戻金の有無を調査することとなります。

③について、配当は相当程度の破産財団が形成された場合に行われますが、一般消費者の方の破産手続では配当に回せるだけの破産財団が形成されることはほとんどなく、例えば、高額の解約返戻金がある保険を破産者が有していた場合や、アンダーローンまたは担保の設定されていない不動産があるような場合に限られます。

配当に回せるだけの破産財団が形成されない場合、配当手続は行われず、破産手続は異時廃止となります。

⑵ 免責に関する破産管財人の役割

破産管財人には、破産者に免責不許可事由があるかどうかや、あればその内容について調査し、免責に関して意見を述べるという役割があります。

一般消費者の方の破産の場合、免責不許可事由として多いのは浪費とギャンブルですが、その際、破産管財人が破産者に対して家計の指導を行ったり、反省文の提出を促したりすることがあります。

これらは、破産管財人が免責について意見を述べる際の資料となりますので、誠実に対応する必要があります。

3 破産管財人の権限

上述した破産管財人の役割を行うにあたり、破産管財人には、①破産者の財産の管理処分権と、②調査権限が与えられています。

⑴ 破産者の財産の管理処分権

破産管財人は、破産財団に帰属する破産者の財産を破産者の承諾なしで売却等することができます。

ただし、不動産など、一定の財産を処分するにあたっては、裁判所の許可が必要とされています。

⑵ 破産管財人の調査権限

破産管財人は、転送されてきた破産者宛の郵便物を、破産者の承諾なしで開封して内容を確認することができます。

破産者宛の郵便物により、財産目録に記載されていない財産が判明したり、債権者一覧表に記載されていない債権者が判明したりすることがあります。

また、破産管財人に破産者の財産の管理処分権が与えられていることにも関係しますが、破産管財人は、銀行や証券会社などに問い合わせて破産者名義の口座の有無を調査することができますし、破産者の会計帳簿の調査をすることもできます。

さらに、破産者には、破産管財人の調査に対する協力義務、説明義務が課せられており、この義務に違反することは免責不許可事由とされています。

4 破産管財人に支払われる報酬について

最後に、破産管財人に支払われる報酬についてご説明します。

破産管財人に支払われる報酬は、裁判所が、引き継ぎ予納金を含む破産財団の範囲内で決定します。

少額管財で、20万円の予納金以外の財団が形成されなかった場合は、20万円から裁判所への交通費や謄写料、通信費などといった事務費を控除した金額が破産管財人の報酬とされます。

少額管財手続を行っている裁判所では、予納金の20万円(から事務費を控除した金額)を破産管財人の最低報酬と考えているのが通常であり、例えば破産者が借りていた建物の明け渡しで費用が掛かる見込みがあるなど、事務費以上の出費が想定される場合は、予納金の増額を求められるのが通常です。

大規模な会社が破産をするような場合には、破産管財人の報酬が1000万円を超えることもあります。

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