自己破産とは
自己破産とは,借金を返済できなくなった人が,裁判所に申立てをし,財産があればそれを換金するなどして債権者に公平に配当をした上で,残った借金の全額の支払いを免除してもらうことをいいます。
財産が何もなければ,免責手続きといって,借金を免除してもよいかどうかを審査する手続きのみが行われ,問題がなければ,借金の支払が免除されます。
自己破産は,借金を返済できる見込みのない人に,再度のやり直しのチャンスを与えるために作られた制度です。
ただし,自己破産は,債権者に大きな不利益を与える制度なので,浪費やギャンブル等をしていたり,裁判所にウソの報告をしたりすると,借金の支払の免除が認めらないこともありますので,十分な注意が必要です。
どうしても,自己破産が認められない場合には,個人再生など別の方法を検討することになります。
自己破産の主なメリット
- ○弁護士に依頼すると,各債権者からの取立てが止まります。
- ○原則としてすべての借金の支払が免除されます。
自己破産の主なデメリット
- ●自己破産をすれば,マイホーム等資産価値の高いものは,原則として手放すことになります。
- ●自己破産の手続中は,保険代理業,警備員等一定の職業に就けなくなります。
- ●官報に掲載されます。
もっとも,一般の人が官報を見る機会はほとんどなく,自己破産したことを周囲に知られることはほとんどありません。 - ●浪費等がひどい場合には借金の支払の免除が受けられないことがあります。
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自己破産後の生活
1 はじめに
自己破産した後の生活が、従来とどのような変化があるのか、法律相談していると誤解されているケースもありますので、以下、例示列挙にはなりますが、記載していきたいと思います。
2 財産形成について
自己破産をすると、財産はすべて没収され、財産を持てなくなる、と思っていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんがそんなことはありません。
確かに、自己破産をすると、自己破産開始決定時の財産について、ある一定の財産を除き、換価(処分)されることはあります。
しかし、自己破産開始決定後については、新たに財産を取得したとしても、それを没収・処分されることはありません。
自己破産後に財産を保有したりすることは可能です。むしろ、法律相談の際には、「老後のためにも貯金とかしていってくださいね。」とお話させていただくぐらいです。
3 新たな借り入れ等について注意
新たな財産等を取得・保有することは可能ですと申し上げました。
ただし、信用情報には事故情報として記載されていますので(いわゆるブラックリスト)、そのブラックリストの期間中は、ローンを組んだり、新たな借り入れができません。
そのため、ローンを組んでの財産取得は一定期間は難しくなります。
また、クレジットカードの作成の際に、審査が通らないといったケースもありますので、新たなクレジットカードが作成・利用できないことがあります。
4 仕事について・資格制限
確かに、破産手続き中においては、資格制限といって、一定の職業に就くことができないことがあります。一般的に知られているのは、警備職に就けないなどと言うことがあります。
しかし、破産手続きが終了すれば、そのような資格制限は課せられません。
そのため、警備職に就くこともできます。
また、資格制限が課せられていない職業あれば、破産手続き中であっても、自由に仕事をすることができます。
5 家族への影響
基本的には、家族が保証人になっているなどの事情がない限り、破産手続き中であっても、自己破産後であっても、家族への影響はありません。
影響があるとすれば、3の新たな借り入れに属することですが、家族が借入れをしようとする際の保証人になろうとしても、審査が通らず、保証人になれないといったことが考えられます。
自己破産手続きを終えてから借金が免責されるまでの流れについて
1 自己破産と借金の免責は異なる制度です
「自己破産をすれば、借金の返済をしなくてよくなる。」。このような説明を聴いたことのある方は数多くいらっしゃるのではないかと思います。
たしかに、現在の裁判所の実務の運用状況をみると、自己破産の手続きを無事終えた場合には、大半の案件で、借金の免責が認められていますので、このように説明したとしても決して間違いではありません。
ただし、法的に正確に説明する場合、自己破産と借金の免責は別個の制度であり、その違いを理解しておくことは免責審尋の際に役立つことがあります。
2 自己破産と借金の免責の関係について
まず、「免責」という手続きは破産法248条以下に定められている制度です。
破産法253条本文では、「免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。」と定められており、①破産者であることと、②免責許可決定が確定したことの二つを条件に、破産債権について責任が免除されると定めています。
このように、条文の仕組み上、免責を受けるには「①破産者であること」が求められていますので、免責を受ける前提として、先に、自己破産の手続きを完了している必要があることになります。
3 免責許可の申立てについて
ただし、自己破産と免責は別個の制度ですので、自己破産をしたからといって、自動的に「②免責許可決定」が受けられるわけではありません。
免責許可決定を受けたい場合には、原則として「破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後一月を経過する日までの間に」、免責許可の申立てをしておく必要があります(破産法248条1項)。
ただし、自己破産を求めておきながら免責まで求めないという債務者は極めて稀であると考えられるため、破産法248条3項では「債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなす。ただし、当該債務者が破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは、この限りでない。」と定めて、自己破産の申立てをした場合には、免責許可の申立てもされたものとみなすことを明らかにしています。
4 免責許可決定と免責不許可事由について
そして、免責許可の申立てもなされている場合には、破産管財人や破産債権者の意見を聞いたうえで、破産手続き終了後に、裁判所が免責を認めるかどうかの決定をすることになります。
破産法252条1項柱書では「裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。」と定めており、破産法252条1項各号に記載された免責不許可事由に該当しない場合には、きちんと免責許可決定をすることを明らかにしています。
この免責不許可事由はいくつもありますが、代表的なものとしては浪費・ギャンブルなどで借金をつくったこと(法252条1項4号)や、財産隠しをしたこと(252条1項1号)、一部の債権者を意図的に隠すなどして虚偽の債権者名簿を作成して提出したこと(252条1項7号)などがあります。
ただし、これらの免責不許可事由に該当したからといって、すぐに絶望する必要はありません。
破産法252条2項では「(免責不許可事由に該当する場合でも)裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」として、裁量による免責を認める余地を残しています。
過去に、破産手続き開始前に、免責不許可事由に該当するような事情があったとしても、真摯な反省のうえに、生活再建に向けた努力をしている姿勢をみせていけば、裁量免責が認められることは珍しくありません。
5 まとめ
このように、自己破産によって借金の返済を免れるには、自己破産手続きと免責許可決定の手続きという二つのハードルを越える必要があります。
これらの手続きの対応には、たくさんの資料を整理して適時に裁判所に説明を行うなどの対応が必要となりますので、自己破産は弁護士のサポートがあることが望ましい手続きであるということができます。
自己破産をご検討の方は、一度、弁護士法人心までご相談ください。
自己破産と勤務先との関係(退職金)
1 自己破産と退職金
自己破産は、ある一定以上の財産を換価して債権者へ配当するとともに、一部の例外を除いた債務の免除を受けるという手続です。
この財産の中には、退職金債権が含まれます。
退職金は、給与の後払いという性格を有しており、退職する際に支払われるというものです。
雇用されている側から見ると、退職の際に雇用主に対してお金の支払いを求めることができる権利なので、債権という財産として扱われます。
2 退職金に関する資料
退職金の有無や、退職金の金額は、勤務先によって区々です。
退職金の有無については、通常は労働契約書や退職金規定等に記載があります。
退職金がある場合には、その計算方法(勤続年数に一定の係数を掛け合わせるというものが一般的です)が記載されていることが多いです。
いずれにしても、自己破産の申立てをする際は、これらを根拠づける資料が必要です。
そのため、退職金に関する書面を取得する必要があります。
大きな会社などでは、個々の従業員が社内のシステムにアクセスして、退職金に関する資料を印刷できる場合もあります。
また、人事部や勤労部等にお勤めの方であれば、自身の判断で退職金に関する資料を取り出すことができる場合もあります。
これらケースでは、特に問題はありません。
他方、人事部等に申請をしないと退職金に関する資料を取得できない場合もあります。
このような場合、多くは理由を伝えないと資料を出してくれません。
このタイミングで、自己破産を検討していることを会社に伝えざるを得ない場合もあります。
自己破産手続においては、会社に勤められている場合は、退職金に関する資料を提出しないことはできません。
そのため、どうしても会社に知られたくないとなると、自己破産手続きができなくなることがあります。
借金は、時間が経てば経つほど遅延損害金等が膨らむだけでなく、貸金業者等が訴訟等を提起するなどして、生活に支障をきたすことがあります。
会社に知られたくないがために自己破産を先延ばしにしてしまうと、会社の給与以上に貸金業者等へ支払わなければならない事態に陥ってしまうこともあります。
そのため、時には正直に事情を説明してでも、退職金に関する資料を取得しましょう。
自己破産における自由財産とは
1 自己破産における自由財産とは
⑴ 破産手続とは、債務者の財産を売却してお金に換え、債権者に平等に分配した後に残ってしまった債務の支払義務を免除する手続です。
自由財産とは、自己破産をしても破産財団に属さず、処分の対象とならない財産をいいます。
⑵ 破産手続開始時に破産者が有している差押え可能な財産が破産財団に組み入れられ、それらは破産管財人の管理のもと換価処分されて、破産債権者等に弁済または配当されます。
しかしながら、個人の破産の場合、破産をした方は、破産後も生活をしていかなければなりません。
破産者の全財産を処分してしまうと、仮に免責が許可されたとしても、生活をしていくことができなくなってしまいます。
そこで、個人の破産の場合、生活に必要となる最低限度の財産については、破産者が有する財産であっても破産財団に属さないもの、つまり、仮に自己破産したとしてもその財産を処分しなくてよいものとされています。
2 自由財産の種類
自由財産には、以下のものがあります。
- ① 新得財産(破産法34条1項)
- ② 差押禁止財産(破産法34条3項2号)
- ③ 99万円以下の現金(破産法34条3項1号)
- ④ 裁判所によって自由財産の拡張が認められた財産(破産法34条3項4号)
- ⑤ 破産管財人によって破産財団から放棄された財産(破産法78条2項12号)
上記①から③までは、本来的自由財産と呼ばれています。
3 新得財産
破産手続開始後に破産者が新たに取得した財産は、破産財団に組み入れられないということになります。
破産者の方が破産手続開始決定後に取得した財産は、自己破産をしても換価処分の対象にはなりません。
4 差押禁止財産
生活必需品等の差押禁止動産や、生活に必要な収入等の差押禁止債権についても自由財産として、破産後も債権者の手元に置いておくことができます。
5 99万円以下の現金
99万円以下の財産は、破産後も債権者の手元に置いておくことができます。
銀行等の預金や貯金などは、自由財産としても現金には含まれません。
6 自由財産の拡張
本来的自由財産ではない財産であっても、裁判所の決定によって自由財産として取り扱うことができるようになるという制度が設けられています。
自由財産の拡張の基準については、法律上具体的な規定がないため、裁判所によって基準が異なるところもあります。
基本的には、預貯金・生命保険解約返戻金・退職金・自動車・敷金債権等を中心に、現金も含め総額99万円の範囲であれば認められることが多いです。
債権者平等の原則とは
1 債権者平等の原則と注意すべき点
自己破産手続きを進めるにあたっては、当然遵守しなければならないルールがあります。
その1つが、債権者平等の原則です。
各債権者との関係で平等な取り扱いが必要となる、というこの原則との兼ね合いで、自己破産をする前に注意しなければならないことをまとめました。
2 家賃の滞納
自己破産を考える方の中には、日々の生活費の捻出も難しく、結果として家賃を滞納してしまっている、という方もいます。
家を失っては生活が成り立たない、ということはもちろんではありますが、家賃を滞納している、ということは、家の貸主は債権者の一人、ということになります。
したがって、そのまま自己破産をしようとすると、他の債権者を差し置いて滞納分の家賃の支払いをすることは、債権者平等の原則に抵触することになります。
このため、家賃の滞納中の場合、引っ越しをする、滞納分をご親族などに支払っていただく等、何らかの手当てが必要となります。
3 勤務先からの借入れ
勤務先からの借入れも、上記2と同様に、債権者平等の原則の適用対象となってきます。
勤務先からいきなり弁護士名で書面が届くというのも今後の業務に支障が出る可能性が高いものと言わざるを得ません。
特に勤務先での仕事を継続することを考えているのであれば、ご親族に代わりに支払っていただく等の対応をとる必要性は高いといえます。
4 保証債務
例えば住宅ローンを組んだ際、夫(妻)が主たる債務者、妻(夫)がその連帯保証人となるような場合があります。
主債務者である夫(妻)がきちんと支払いを継続している分には保証人に請求がくることがないため、意外と忘れがちになるかもしれません。
しかし、保証債務も債務ですから、自己破産の手続き上は債権者となってきます。
結果として、保証人を変更する等といった対応を求められる場合もありますので、一度主債務者には破産の件について伝えておく必要があるといえます。
5 詳細については弁護士にご相談ください。
弁護士法人心 名古屋法律事務所は、名古屋駅から徒歩約2分です。
直接弁護士が相談させていただきますので、自己破産について知りないことがある方はお気軽にご相談ください。
管財事件になりやすい事案
1 同時廃止事件と管財事件
自己破産の手続には、同時廃止事件と管財事件という二つの類型があります。
両者の違いは破産管財人という弁護士が裁判所から選任されるか否かであり、破産管財人が選任されると、破産管財人の費用(20万円~60万円ほど)を負担しなければならず、また破産管財人との面談や債権者集会という裁判所で行われる手続きに出席しなければなりません。
2 管財事件になりやすい事案
⑴ 20万円以上の財産がある事案
不動産、自動車、保険の解約返戻金、退職金(8分の1で計算されることが多い)等、個別財産の評価額が20万円を超えていると、基本的にはその財産をお金に換えて債権者へ配当する必要がありますので、管財事件となります。
⑵ 借入れの事情がよいとはいえない事案
生活費や学費など、必要に迫られた借入れであれば管財事件になりにくいですが、他方で、ギャンブル、投資、浪費などが原因で借入れを行った場合など、借入れの目的や使い道が好ましくない場合には、管財事件になる可能性があります。
また、返済できる見込みや返済の意思がないのに借入れを行った場合、換金目的でクレジットカード決済を行った場合、他人に売却する目的で携帯電話の契約をした場合、氏名・収入等を偽って借入れをした場合など、債権者に対する悪質性が認められる場合には、管財事件になる可能性があります。
これは、破産をするにあたって好ましくないお金の使い方を辞めることができているか、悪質性のある借入れを行ったこと等についてしっかり反省し収入の範囲内で慎ましく生活できているかなどを管財人の方でチェックする必要があるからです。
⑶ 法人や個人事業主の破産
法人や個人事業主の方の場合、在庫商品や売掛金、事業に使っていた機械類などの財産があったり、従業員の給与や取引先への買掛金などの債務が残っていることもありますので、原則として管財事件となります。
自己破産手続中の郵便物の転送
1 管財事件
個人(自然人)の方の破産手続には、同時廃止手続と管財手続があります。
同時廃止手続は、破産管財人が選任されず、破産手続開始決定と同時に廃止されます。
他方、管財手続では、破産管財人が選任され、破産者の財産の換価処分や免責不許可事由の調査を行います。
2 郵便物の転送
⑴ 破産手続が開始すると、破産者宛の郵便物はすべて破産管財人に転送されます。
なお、同居者宛の郵便は転送されません。
破産管財人は、転送郵便をチェックすることで、破産者が破産申立ての際に提出した財産目録に記載していない財産がないかどうかを調査することができます。
預貯金口座を財産目録に記載していないことはほとんどないですが、証券口座など、弁護士に破産を依頼した際には既に利用していなかったものについては、破産者が破産を依頼した弁護士に申告していないこともありますので、破産管財人による郵便チェックにより判明することがあります。
破産を依頼した弁護士には、財産を漏れなく申告することが重要です。
⑵ 郵便物の転送で判明する事実には、財産のほか、免責に関する事実があります。
例えば、破産者宛のパチンコ店のダイレクトメールが破産管財人に転送されることがあります。
破産申立書において、パチンコについての事情を記載していれば問題ないですが、何も記載していないと免責に関する事実を秘匿したと受け取られかねませんので、借金の原因や破産の原因にパチンコが関係あるのであれば、破産を依頼した弁護士に正直に申告することが重要です。
⑶ 破産手続中にクレジットカードの申し込みを行い、その審査結果の通知が破産管財人に転送されることがあります。
破産手続中に意図的にクレジットカードの新規申込みをする方はまれですが、スーパーマーケットの入り口でクレジットカード加入の勧誘を受け、そのまま手続を行ってしまう方もいます。
破産手続中にクレジットカードの新規申込みに関する郵便が転送されると、破産することについて反省しているのかどうか疑われますので、注意が必要です。
⑷ 破産管財人から郵便物を受け取る方法は、破産管財人により異なりますので、管財人面接の際に確認してください。
また、公共料金等について、郵便で届く振込用紙での支払いにしている場合は、破産申立ての前に口座振替に変更しておくとよいでしょう。
破産による資格制限と復権
1 破産による資格制限
破産者には、個別の法律により特定の資格や職業につけない旨規定されています。
具体的には、貸金業者、警備業者や警備員、生命保険募集人、宅地建物取引業、風俗営業を営もうとする者や風俗営業の営業所管理者、後見人、旅行業者や旅行業務取扱主任がこれにあたります。
ただ、これらの制限は復権という制度により、回復します。
2 復権
⑴ 免責許可の決定が確定したとき
免責許可の決定が確定すると、破産手続開始決定によって破産者に加えられた各種の権利並びに資格の制限が解かれることになります。
そのため、破産手続きが順調に進めば、資格の制限があるのは開始決定から免責許可が確定するまでの期間のみとなります。
⑵ その他
仮に免責許可がえられなかったとしても、破産手続開始の後、詐欺破産罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したときも復権となります。
また、弁済やその他の方法により破産債権者に対する債務の全部について責任を免れた場合には、破産者の申立てによって、復権の決定が下されることになります。
そのため、仮に免責の許可を得られなかったとしても、資格制限が続くということはほとんどありません。
加えて、債権者の同意によって破産手続廃止の決定が確定したときや、再生計画認可の決定が確定したときにも、復権の効果が生じることになります。
3 まとめ
弁護士法人心は,名古屋駅のすぐ近くに事務所を構えており、債務整理の相談についての相談料は無料となっております。
お気軽にご相談ください。
自己破産と免責の関係
1 自己破産手続きと免責
「自己破産=すべての財産を失うとともに債務もなくなる」というイメージがあるかと思います。
これは、概ね合っていますが、厳密には異なります。
自己破産は、まず破産手続開始免責許可申立をし、裁判所による審査を受けて、裁判所から破産状態にあって免責しても良いと認められた場合、すなわち免責許可がなされて初めて債務をなくすことができます(一部、例外的に免責されてもなくならない債務もあります)。
逆にいえば、自己破産申立をしても、免責が認めらない場合、債務はなくなりません。
2 免責が認められない場合(原則)
免責を受けられない事由(免責不許可事由)は法律で定められています。
具体的には、次のようなものがあります。
⑴ 債権者を害する目的で、財産を隠匿、損壊したり、財産の価値を不当に減少させる処分をしたりしたこと
⑵ 破産手続きの開始を遅らせる目的で、著しく不利な条件で債務を負担したり、信用取引により商品を購入した上で著しく不利黄な条件で処分したりしたこと
⑶ 債務者に義務がないにもかかわらず、特定の債権者に対してのみ、担保を提供、弁済を行ったこと(いわゆる偏頗(へんぱ)弁済)
⑷ 浪費、ギャンブル、その他の射幸行為によって財産を減少させ、過大な債務を負担したこと
⑸ 自己破産の申立てがあった日から1年以内に詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと
⑹ 虚偽の債権者名簿を提出したこと、裁判所の調査に対して説明を拒み、あるいは虚偽の説明を行ったこと
⑺ 免責許可決定が確定してから7年以内の申立であること
3 免責不許可事由に該当する行為があっても免責が認められる場合
原則として、上記の事由に該当する行為を行った債務者の方は、免責が認められないこととなります。
しかし、現実的には、一切免責不許可事由に該当する行為がないという方は多くありません。
専門家でなければ免責不許可事由のことを知らないということもあり、悪意なく免責不許可事由を行ってしまっていたというケースもあります。
そこで、仮に免責不許可事由に該当する行為があったとしても、その行為に至った経緯や、行為の程度、債務者の意識や反省状況等を考慮し、裁判官の裁量により免責を認めるという制度があります(裁量免責)。
たとえば、ギャンブルにお金をつぎ込んでしまい、金銭の借入を繰り返し、返済ができなくなってしまったという方でも、債務額や、破産手続きへの協力等の状況によっては、免責を受けられる可能性があるということになります。
したがいまして、免責不許可事由があったとしても、自己破産をあきらめず、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。
自己破産できる人とできない人
1 自己破産と支払不能
破産は、破産法という法律で認められた制度です。
破産できる人は、次のような要件を満たしている必要があります。
まず、支払不能の状態であることです。
つまり、多額の債務を負っていて、これらを返済することができない状態であることです。
このため、破産の申立をしたとしても、裁判所が支払不能の状態であると認めない場合、破産手続開始決定が出されないということになります。
2 支払不能と判断される状態とは
それでは、支払不能かどうかについては、どのように判断されるのでしょうか。
一般的には、毎月、債務の返済に回せる金額を計算し、その金額で返済を続けたとしても、3年(36回払い)から5年(60回払い)で返済することができない場合には、支払不能の状態にあるとされる可能性があると言われています。
ただ、実際には、本人の健康状態や就労状況等が総合的に考慮されることになりますので、この条件を満たせば必ず破産が認められるという明確な基準はないと考えておいた方が良いでしょう。
また、裁判所に現在の状況がきちんと伝わるかどうかにより、破産が認められるかどうかが変わってくることもあります。
3 自己破産のことは弁護士にご相談ください
先に述べましたとおり、破産が認められるかどうかにつきましては、裁判所に現在の状況がきちんと伝わるかで変わってくることがあります。
後で後悔しないためにも、自分が置かれた状態をきちんと理解し、それを裁判所にきちんと伝えてくれる弁護士を見つけられることがポイントとなることもあります。